2026年10月31日 作成 / 執筆:アニ-講師 / 閲覧数: 26

「想定外を想定する技術者、BCPとレジリエンスで持続可能社会へ」
近年は、大規模地震や集中豪雨等による自然災害が頻発化、激甚化傾向にあります。技術士試験ではこれまでも各部門において、自然災害に関する問題が数多く出題されています。自然災害に対して、発災後の「BCP(事業継続計画)」や「レジリエンス」への対応について、技術士試験ではどのように準備しておくべきかについて、今回ご紹介したいと思います。
1. BCPとレジリエンスとの違い
1)BCPとは
BCP(事業継続計画)とは、自然災害等の危機事象が発生した場合でも、重要な事業や企業活動を中断させず継続する。または、早期に復旧させる対応方針や体制、手順等を予め定めておくための計画です。
2)レジリエンスとは
レジリエンスとは、災害等による外力を受けた場合でもその影響を最大限抑制し、所要機能を維持、早期に回復・復旧に導くために、強靱な状態を保有、維持できる能力のことです。 したがって、BCPは「災害時の事業継続計画」であるのに対し、レジリエンスとは「災害に対応した組織及び社会の耐久性及び靭性確保と機能回復への総合的な能力」と整理しておきましょう。
2.技術士試験想定設問
技術士試験の想定設問として、以下を想定、解答文例を以下に示します。 「自然災害に対するBCPによるレジリエンスの向上及び災害時の事業継続上の課題と具体的な解決策及び新たに生じるリスクとその対応策について述べよ。」
3.解答文例
(1)事業継続上の課題
自然災害の発災後はインフラに対する甚大な損傷や被害、機能の喪失、通常の社会システムの麻痺が想定され、事業継続上の主な課題として、以下が想定される。
1)「復旧支援人員、資機材等資源調達と不足」
2)「生活及び情報・通信インフラ機能の途絶」
3)「交通インフラやサプライチェーンの寸断による復旧支援、食料、医療品、復旧物資の供給不能」
4)「早期迅速復旧時に対する二次災害発生リスク」
(2)講ずべき対応策
1)事前準備と資源の確保
国民生活の安全、危険回避に優先度を考慮した上で、予め災害発生リスクを考慮し、必要な人員、資機材、電力、燃料等を整理、緊急代替要員の配置計画、資機材の分散配置、非常用電源の計画確保、非常用燃料の備蓄を事前に計画する。
2)情報アクセス網の強化
平時から通信手段の多重化、データのバックアップ、クラウド等を活用した情報基地の分散配置、非常時の機能確保整備を推進する。特に確実な災害情報の収集伝達は、発災時に極めてな重要項目であり、通信障害が発生した場合は、他の代替手段により、瞬時に移行可能な情報アクセス網の構築が重要である。
3)官民の緊密連携と機動体制準備
平時から行政と民間との緊密連携を維持体制確保するとともに、特に復旧資源供給のサプライチェ-ンの事業継続状況を確実に把握、臨機対応が可能な機動的体制を確保する。資源調達先の複数化、代替品、代替調達ルートの確保、相互支援協定の事前締結等により、官民の円滑連携により社会全体のサプライチェーンを計画、構築する。
4)二次災害リスクへの対応
自然災害発生後の早期復旧では、被災箇所の地盤や構造物は不安定な状態にあり、余震、降雨、増水等による二次災害の発生がリスクとして懸念され、以下の対策を講じる。
・リスク評価と復旧計画の策定(発生リスクを評価、危険区域の設定、復旧作業の優先順位付け)
・監視・警戒体制の強化(傾斜計、地盤伸縮計等観測機器の設置とモニタリング、管理基準値や作業中止)
・退避基準の事前設定、異常発生時に対する関係機関との情報共有)
・無人化施工等による危険作業を回避した復旧(遠隔操作式重機、ロボティクス及びドローン等の活用)
4.評価に差がつく記述
技術士試験の解答文として、以下の視点を記述することで評価点に差をつけましょう。
・予防力:リスク評価、脆弱性の把握
・継続力:BCP、代替要員・設備の確保
・対応力:指揮命令系統、迅速な情報共有 ・回復力:復旧手順、応援体制の整備
・適応力:訓練・検証、継続的改善
1)「多面的な観点」
発災時対応では事業継続だけでなく、人命安全確保の優先、社会インフラの機能維持、環境への影響、地域社会、経済性、情報セキュリティ等を多面的な観点から評価し、特定の対策に偏らないよう、対策の最適化が重要である。
2)「優先順位」
発災直後は経営資源が制約されるため、社会的影響が大きい事象や早期回復が必要な箇所を優先し、目標復旧期限と可能な資源の重点投入により、迅速かつ柔軟に対応する。
3)「関係者調整」
災害時には、行政、地域住民等、民間企業等多様な関係者との連携が必要となる。このため、平常時から役割分担、連絡体制、情報共有方法を明確化し、定期合同訓練や協議を継続を通じ実効性の向上施策を展開する。 BCPは単なる計画書ではなく、訓練・評価・改善を継続するPDCAサイクルとブラッシュアップにより、組織単独ではなく地域社会全体のレジリエンスの向上につなげることが重要である。
5.総合技術監理部門対応
技術士部門の特に総合技術監理部門では、災害や危機が発生に対し、リスク管理のほか、組織マネジメントの資質能力が求められるため、以下のようなレジリエンス強化のための組織体制の在り方を示し、コンピテンシ-と紐付けた記述で、その資質能力をアピ-ルして下さい。
1)指揮命令系統の明確化
緊急時の責任者、意思決定権限、代行順位を明確にし、迅速な初動対応を可能とする。
2)多重防御と代替機能の確保
人員、設備、通信、電源、調達先などを複数の多重防御と代替機能を確保する。
3)部門横断的な連携体制の構築
行政、現場、技術部門、後方支援組織などの情報共有と連携を強化、横断的連携体制を構築する。
4)人材育成と組織学習の推進
災害想定による定期訓練、結果検証及び継続的改善、人材育成と組織的学習を推進する。
6.ポイント
レジリエンスは、単に災害に耐える「強さ」だけではありません。危機を早期に把握し、機能を維持・回復し、経験から学び変化に適応する組織総合力が重要なのです。 技術士解答文では、「組織体制の整備 → BCPの実効性向上 → 継続的改善」という流れで論述すると、具体性のある答案にまとめやすくなります。 口頭試験を意識し、「想定外を想定する技術者」の在り方を考えてみて下さい。 次回は「口頭試験へのギヤチェンジ」について、紹介したいと思います。(以上)