「リスクマネジメントの解答攻略法」

2026年10月24日 作成 / 執筆:アニ-講師 / 閲覧数: 25

「リスクマネジメントの解答攻略法」  

 技術の発展は、文明社会に対し、時に革新的変化をもたらしてきました。技術は豊かな人間生活や文明社会の享受に多大に貢献しています。但し、これらは全て、何の障害もなく順風に進められて訳ではありません。時には新技術の実現に際しては、英断の末の結果であったこともまた、様々な分野における歴史であったと推測します。  何かを成し遂げる。あるいは課題を解決する。には、新たに生じる課題を把握し、確実に備える「リスクマネジメント」が、現代社会では必要とされています。  今回は、技術士全部門で問われる資質能力の1つである「リスクマネジメント」の捉え方について、ご紹介したいと思います。

 1. 「リスクマネジメントが必要な理由」

  現代社会や我が国を取り巻く国際情勢はより複雑化、高度化するとともにその一方では、自然災害、事故、サイバー攻撃、環境問題などの不確実性が増大しています。しかしながら、あらゆるリスクを完全に排除することは、現実としてできません。 したがって、顕在、潜在リスクを事前に把握、評価し、優先順位に基づき適切な対策を講じ、事故や損失の発生確率や影響を低減し、社会へ与える影響を、最小化することが求められているのです。 ここで重要な視点は、「リスクはゼロにはできない。」、「だからそれを管理、コントロ-ルする。」という考え方が、リスクマネジメントの必要な理由なのです。

2.解答文の基本構成

リスクマネジメントでは以下の「5段階構成」を基本として考えましょう。

1)背景と現状(不確実性を示す)

  例えば社会インフラの老朽化、自然災害の激甚化、担い手不足、技術の高度化、複雑化等により、事業を取り巻く、不確実性が増大している社会的現状を示します。

 2)リスクの特定

 不確実性が顕在する状況では、発生する事象を完全に予測、回避することは困難であり、そのため、潜在するリスクを事前に特定することが重要です。過去の事故、災害事例、専門家の知見、各種データ等実績を活用して「何がリスクであるか?」を特定します。

3)リスクの評価

 次に、発生確率 × 影響度という観点から、発生確立の度合いや影響の程度を評価します。これに基づき、対応すべき事項と優先順位を設定します。

 4)対策とモニタリング

 優先度の高いリスクについて、回避、低減、移転、保有等の対応方針を選定します。また、対策後もKPI(重要業績評価指標)等によってその効果を確認し、リスクの変化に応じてPDCA管理を継続します。

 5)技術者倫理・公益性

 特に、人命や社会基盤に重大な影響を及ぼすリスクについては、経済性だけを優先せず、安全・安心を最優先として判断します。また、関係者への情報共有と説明責任を果たし、社会全体の利益を踏まえて意思決定することが重要です。

 3.自然災害等に対するリスクマネジメント記述(例)

 技術士第二次試験の「自然災害等に対するリスクマネジメント」を想定した記述(例)を以下に示します。

(1)リスクの洗い出しと評価

 自然災害等に対するリスクマネジメントでは、災害による人的被害、社会的損失及び事業継続への影響を最小化することを目的として、リスクの特定、分析・評価、対応策の立案・実施及びモニタリング計画を立案する。 地震、豪雨、洪水、土砂災害、津波等の自然災害について、発生頻度と影響度の観点から地域や組織活動におけるリスクの洗い出しを行う。その際、ハザードマップや過去の災害記録、施設の脆弱性、周辺地域への波及影響等を考慮し、リスクを定量的又は定性的に評価する。

(2)対応策の選定

 評価結果に基づき、リスク回避、低減、移転及び保有の観点から対応策を選定する。具体的には、施設の耐震化・浸水対策、重要設備の代替化、非常用電源の確保、備蓄、避難計画及び事業継続計画(BCP)の策定等を実施する。また、限られた経営資源を有効活用、効率的に配分するため、対策選定は費用対効果及び実施の優先順位を考慮する。

(3)定期チェックと改善

 災害発生時には、人的安全を最優先として、指揮命令系統を明確化し、関係機関、協力会社、地域住民等との情報共有を迅速に行うことが重要である。このため平常時から防災訓練や災害教育を実施し、対応能力を向上、有事に確実に機能できる体制確保が肝要である。 これらの取組みについては、災害リスクや社会環境の変化を踏まえて定期的に評価・見直しを行い、PDCAサイクル管理により、自然災害に対する社会的レジリエンスを向上する。

 4.総監らしい管理項目キーワ-ド

 ここでは、技術士総合技術監理部門の視点で、単なる「防災対策」ではなく、総合的マネジメントをイメ-ジ、以下の管理項目のそれぞれがPDCAサイクルとして常に回転、継続、相互に連携していることを訴求するためキーワ-ドを以下に整理してみます。

・安全管理:人命尊重第一主義による国民生活の安全確保

・経済性管理:対投資費と被害軽減効果の比較、最適化のための優先順位設定

・人的資源管理:防災教育・訓練の継続、支援人材資源確保や体制構築

・情報管理:災害情報の収集・共有、連絡体制、情報の一元化管理

・社会環境管理:行政と地域住民の円滑連携、環境保全、サプライチェーンへの影響最小化 特に解答文記述や口頭試験の応答では、「リスクを評価して完了」ではなく、「複数の管理分野を横断的に連携させ、限定、制約ある諸資源の最適配分」が、総合技術監理部門らしい解答ポイントと考えます。

5.評価を上げる一文 

 評価を挙げる一文として、以下を提案します。この一文の内容を自分流に整理、記述文に織り込むことをお勧めします。 「リスクをゼロにすることを前提とせず、経済性・安全性・環境性・社会的受容性を総合的に勘案してリスクを許容可能な水準まで低減することが肝要である。残存リスクは関係者間で継続的に共有し、説明責任を果たしながら合意形成を図り、確実なリスク管理を徹底することが重要である。」

 技術士試験では、「複数の観点から総合的に判断し、説明責任を果たしながら、残存リスクを継続的に管理する。」とした技術的判断力とマネジメント能力の両方を示すことが、採点評価を向上できると考えます。

次回は、自然災害や事故発生後のBCPと、レジリエンスの重要性について解説してみたいと思います。(以上)

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