「技術士試験で差がつくトレード・オフ解答文」

2026年10月17日 作成 / 執筆:アニ-講師 / 閲覧数: 16

「技術士試験で差がつくトレード・オフ解答文」

  今回は、総合技術監理部門及び、それ以外の技術部門の技術士第2次試験の必須項目である「トレ-ドオフ設問」に焦点をあて、解説してみたいと思います。

 1.「トレード・オフ(trade-off)」とは?

 トレ-ドオフとは簡単にいうと、ある性能を改善しようとすると、別の性能が逆に悪化を招くような関係のことを言います。平たく言えば、「こちらを立てれば、あちらが立たず」でしょうか。いわゆる相反関係、両立が難しい問題を呼称しています。 総合技術監理部門が新設された当時、私はこの受験準備のため当時、バイブルテキストであった「総監青本」で、見慣れない用語「トレ-ド・オフ」に向き合った記憶が蘇ります。

 2.トレ-ド・オフが問われる理由

 技術士試験で「トレードオフの課題」が問われるのは、技術士に求められる本質すなわち、「一つの性能を最大化すること」ではなく、「複数の要求、制約を調整し、最適な解へと導くこと」が必要だからなのです。 例えば、道路整備は安全性、走行快適性を高め、利便性を向上、用地制約や建設費を抑制、工期を短縮、環境負荷を最低限にする要求があります。しかし、これら全てを同時に解決することは、諸般の制約から非常に困難を伴うのが現実なのです。

 3.技術士試験の要求事項

  技術士試験では専門的な知識・応用能力、問題解決能力、多面的な視点、経済性・安全性・環境などへの配慮、公益を確保する判断力を求めています。トレ-ド・オフに関する設問する理由として、その解答から、その適切性を一度に確認できるからなのです。 つまり、技術士試験では、

・「問題を見つける」→

・「複数の要求が対立する課題を設定する」→

・「トレードオフを整理する」→

・「最適な解決策を選ぶ」 という思考とその能力を有しているかを記述内容から判定しています。言い換えると、技術士は「正解を知っている人」ではなく、「制約条件の中で、公益性を考慮し最適解を選択できる技術者」なのです。

 4.トレ-ドオフ関係の典型例

「トレ-ドオフ」の関係として例えば、道路、橋梁等インフラの計画、設計の場合なら、以下のような関係例が挙げられると考えます。

 ・安全性向上:安全性は高くなるが部材が大きく重層となり、コスト及び重量が増大する。

・工期短縮:工期短縮対策を実施することで、施工コストが増大する。

 ・環境負荷低減:環境対策を行うための準備及び対策費にコスト負担が増加する。

 ・品質向上:品質向上施策の展開により、従来以上にコストや所要時間を必要とする。

 ・維持管理性:効率的な維持管理を目指すことにより初期投資、建設費が高価となる。

 5.技術士試験での重要ポイント

 1)トレ-ドオフは最適化  

 トレ-ドオフをよりわかりやすく理解するには、「一方を良くすると、もう一方が悪くなる。その両方をどう最適化するか?」=「トレード・オフ」と自分なりに認識しておけば、試験で記述しやすいです。 特に必須科目Ⅰ:「課題・解決策」や選択科目:Ⅱ、Ⅲでは、この理解が「安全性、品質、コスト、工期、環境、維持管理」などの間にあるトレード・オフ問題の記述に有効と考えます。

 2)両立できることの最大値

 解答文では単に「AとBが相反する」と問題提起するだけではなく、どうすれば両立させることができるかその対策について言及することが重要です。例として工期と品質に対しての両立を示します。 「工期短縮と品質確保にはトレードオフの関係がある。その理由は工期短縮を目的するあまり、品質低下を招くことを防止する必要がある。施工効率化を図り、重要工程については十分な品質管理を徹底する。」 とした施策の両立を示します。以下に管理項目別に、トレ-ド・オフ課題の解答文例を整理します。

 6.管理項目別の解答文例

 1) 安全性とコスト(例:橋梁耐震対策)

 橋梁の耐震性向上と事業費の抑制は、トレード・オフの関係がある。このため、施設の重要度や被災時の影響度を評価し、優先順位を設定した上で、効果的な耐震補強を実施する。

  2) 品質と工期(例:コンクリート構造物)

「工期短縮と品質確保にはトレード・オフがある。このため、プレキャスト化やICT施工により施工時間を短縮するとともに、品質に直結する検査・養生等を確実に実施、技術によってこれらの両立を図る。」 

 3)コストと維持管理性(例:道路舗装)

「初期建設費の縮減と維持管理費の低減にはトレード・オフが生じる場合がある。このため、ライフサイクルコストを評価し、初期費用だけでなく供用期間全体の経済性を考慮して対策を選定する。」

  4)環境とコスト(例:建設工事におけるCO₂削減)

 「建設工事において環境影響を最小減とするためには、相応の費用捻出を考慮する必要がある。このため、LCCやCO₂排出量を含めた総合的評価に基づき、経済性と環境性の両面から最適な工法を選定する。」

 5)工期と周辺環境(例:都市部の道路工事)

「工事期間を短縮できれば、施工による周辺住民への影響を軽減できる一方、工期短縮のために施工機械や工事車両の集中は、騒音、振動交通規制が増える可能性がある。このため、現地状況に応じて以下の最適化を図る対策を考慮する。 ・夜間工事等の作業時間帯の効果的適用 ・低騒音・低振動型環境配慮型機械の採用 ・施工時間帯の調整、工事区間の分割 

 6)維持管理性と初期コスト(例:橋梁の点検・補修)

 橋梁等大規模構造物を計画時、建設時に、点検しやすい構造、部材交換が容易な構造、耐腐食性材料の採用は、初期費用が高価となる場合がある。整備費を含め構造物の供用期間全体の維持管理費や点検・補修の容易性を考慮し、LCCの最小化を図ることが重要である。

 7.差がつく一文

 「トレ-ド・オフ」に対し、以下の一文により、解答文の評価に差をつけましょう。 「限定されたリソ-ス、制約条件の下で、解決のための諸検討や工夫に基づき、均衡ある最適化を図り、相反する要求事項を両立させ、解決することが重要である。」 この一文こそが、「技術士試験トレード・オフ」設問の解答文や口頭試問の応答と考えます。  次回は、この「トレ-ド・オフ」と同様に必須課題である「リスクマネジメント」対策について、ご紹介したいと思います。(以上)

2026年 発注者支援業務 求人 新建設コンサルタント株式会社 採用情報
広告 nc-c.jp
【急募】国土交通省の発注者支援業務・CM業務を行う技術者を募集しております。
正社員(2026年100名)、550万円~、土日祝祭日は休日となります。