2026年09月26日 作成 / 執筆:アニ-講師 / 閲覧数: 22

R8年度 技術士試験「建設部門猛暑対策」私的解説
我が国は近年、気温が35℃を超える猛暑日が増加しています。日常生活ばかりでなく屋外作業を余儀なくされることが多い建設業界は、過酷で苦渋な作業環境を現実問題として強いられています。 今回は令和8年度、建設部門-施工計画分野で出題された課題Ⅲ-2の「建設部門猛暑対策」の解答について、私的解説してみたいと思います。 問題文は、以下の通りです。(抜粋要約して記載) 「建設工事における猛暑対策を実施するに当たり,多面的な観点から技術課題を3つ抽 出し,観点を明記したうえで,それぞれの技術課題の内容を示せ。」
1. 技術課題
近年、地球温暖化等の影響により猛暑日の発生頻度が増加しています。気象庁「日本の気候変動2025」によると、日本国内の13観測地点では、1910年以降、日最高気温35℃以上の「猛暑日」の年間日数が増加しています。(この部分は実際の数値データを示し、この問題の認識の高さを示すと良いでしょう。) 特に、1990年代半ばを境に猛暑日が大きく増加が顕著となっており、以下の問題発生の増大が危惧されています。
・気温・WBGT(暑さ指数)の上昇による作業者の体調悪化
・熱中症による労働災害リスク増大
・作業員の集中力低下や体調不良による作業効率の低下
・構築する工事目的物への品質低下影響等
建設現場においては、この現状を踏まえ熱中症リスクの増大に対する施工計画、安全管理が求められており、建設部門として次の3点が技術課題として挙げられます。
1)作業員の熱中症リスクの把握、予測
作業員の熱中症は外気温だけでなく、湿度、輻射熱、作業強度、作業時間によってそのリスクが変化します。WBGT(熱さ指数)測定、ウェアラブルセンサー、気象データを活用したリスク把握と確実予測が技術課題です。
2)作業箇所、環境による高温化
建設作業では炎天下の躯体、屋上、舗装面など、作業環境そのものが高温化しやすい作業環境であり、休憩所を設けるだけでは十分な温度低下が難しい作業環境にあります。遮熱、散水、ミスト、送風、仮設冷房、日射遮蔽など複数の組み合せによる対策の計画と予防対策の実施が技術課題です。
3)生産性と安全確保の両立
熱中症を防止するため、十分に休憩時間を増やすと工程遅延に影響する可能性が想定されます。一方で苦渋で無理な作業継続は事故・熱中症につながる可能性が高く、作業時間のシフト変更、工程の前倒し、早朝作業、機械化及び省人化の導入等、生産性と安全性確保の両立が技術課題です。
2. 最重要課題と解決策
(1)最重要課題
私は最重要課題として、「熱中症リスクをリアルタイムで把握し、危険状態に至る前に作業を中断、作業工程を柔軟に変更できる仕組み構築」が重要であると考えます。 また、単に「気温が高いから休憩する」という管理手法から、個人差や作業内容に応じてリスクを十分に考慮し、「作業者個々へのきめ細かな管理と柔軟対応」のため、以下の対策推進が重要と考えます。
(2) 解決策
1)定期的計測と検知
・現場各所にWBGT計を配備、計測と検知を継続する。
・IoTセンサーにより作業場所の暑熱環境をリアルタイムに監視する。
・作業者個々にウェアラブル端末等を装備、心拍数・体温等を把握、管理する。
2) 気象に基づく危険予測
・気象予測と作業内容による危険時間帯を事前予測、作業前に周知、情報共有する。
・一定の基準を超えた場合の休憩、給水、作業変更をシステムとしてルール化する。
3) 工程消化の工夫
・状況に応じ、「クリティカルパス」を見直し、工程の最適化計画として修正する。
・「早朝、夕方施工」「並行施工」「施工班増強」等作業工程を工夫する。
・朝礼時に当日の「危険時間帯」と「重点対策」に対し、情報共有を図る。
・屋外作業時間帯は早朝等へ移行など、工程計画を臨機、柔軟に変更する。
3新たな懸念事項と対応策
上記対策を実施、展開が進展したとしても、以下の新たな懸念事項が予測されと考えます。
(1)懸念事項
・センサー・ICTの過信による体調悪化判断
・空調、ミスト等による電力・水使用量の増加等環境負荷の増加
・作業員の個人差、高齢化・外国人材などリスク管理の複雑化
(2)対応策
予測される懸念事項については以下の対応策を予め考慮、これに備えた準備が肝要です。
・ICTは補助と位置付け、本人の申告、管理者の巡回、WBGT測定の併用を強化
・必要箇所への重点配置、省エネ型機器、再利用可能な散水方法などによる環境負荷の低減
・多言語表示、ピクトグラムを活用した危険周知、個人差を考慮した休憩設備計画 「熱中症問題」は一過性のものではなく、今後ともに我が国が直面する重大かつ深刻な継続課題であり、様々な観点からの工夫、対応が迫られているものと考えます。 様々な試行と工夫により、建設部門のみならず、我が国全体として克服すべき課題であると考えます。
次回は技術士試験の準備の必須アイテムである「技術士準備マイ・ノート」について、私の子供の頃の思い出も回想しながら、ご紹介したいと思います。(以上)