私的解説:「グリーンインフラ推進戦略2030」を踏まえた課題と対応策」

2026年09月12日 作成 / 執筆:アニ-講師 / 閲覧数: 88

私的解説:「グリーンインフラ推進戦略2030」を踏まえた課題と対応策」  

 今回は前回に引き続き、令和8年度技術士試験建設部門必須Ⅰ-Ⅱ問題を例として、あくまで私的ではありますが解説してみたいと思います。問題文は、以下です。(抜粋、重点課題と解決策等設題は省略して記載。)

 設問:「グリーンインフラ推進戦略2030」を踏まえ,グリーンインフラを活かした具体の取組を進めるに当たり,多面的な観点から3つの技術課題を抽出し,それぞれの観点を明記、その技術課題の内容を示せ。 

1.題意の把握

 国土交通省の「グリーンインフラ推進戦略2030」では、グリーンインフラを「自然の多様な機能を活用した社会資本」と位置付けています。2030年度までに戦略的計画、持続的な維持管理、多様なステークホルダーの参画、財源的確保、新技術・DXなどグリ-ンインフラの活用方策の論述を題意としています。

 2.技術課題の抽出

 上記の計画では、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくり及びウェルビーイング(:社会及び国民生活の快適性向上)を目指しています。 防災・減災、生物多様性、酷暑対策、地域活性化等の複数の社会課題の同時解決に向け、人と自然が共生する社会づくりの観点から、私は以下の3つの技術課題を取り挙げたいと思います。

(1)生態系に配慮したグリーンインフラ(防災・減災と自然環境の保全・再生の観点)

 気候変動に伴い、集中豪雨や洪水、土砂災害等の激甚化が懸念される一方、従来型のコンクリ-トを主体とするインフラでは、環境負荷や維持管理費等の課題となっています。このため、既存の雨水貯留池、緑地、湿地、遊水地、河川等は、自然再生等の観点から、雨水貯留・浸透、流出抑制、土砂流出防止等の自然機能を、防災・減災へと活用が必要とされています。 これに対しては地域の特性、地形・地質、河川流域、生態系等を把握し、ハード及びソフト対策の役割分担を明確にし、広域かつ流域全体でのインフラ整備が技術課題です。

(2)生物生息・移動空間の連続的確保(生物多様性・生態系ネットワークの観点)

  都市化や土地利用の変化により、現状として生物の生息・生育空間の分断が指摘されています。公園、河川、農地、森林、街路樹、緑道等は、生態系ネットワークとしての連続性の観点が不可欠であり、生物の生息移動を可能とする空間を確保が技術課題です。 特に、地域固有種を優先した植栽、在来種の活用、外来種の侵入防止、水辺環境の再生等と組合せ、地域の自然条件に適合したグリーンインフラ形成が重要です。

(3)自然と共生するグリーンインフラ(地域住民のコミュニティ形成の観点)

 グリーンインフラは、防災や環境保全だけでなく、景観形成、健康増進、交流機会の創出、地域活性化等への寄与が求められます。このため、地域住民のウェルビーイングとコミュニティ形成の観点から、自然と共生する機能創出が技術課題です。 これの実現に際しては、行政、地域住民、民間事業者、NPO等が継続的に参加できる仕組みの構築が必要です。また、計画段階から多様な主体が参加した合意に基づき、維持管理の役割分担、活動の財源確保等の一体となった取り組みが肝要です。

3.最も重要と考える技術課題と複数の解決策

 最も重要技術課題として、「自然が有する防災・減災機能を活用し、生態系に配慮したグリーンインフラの計画・設計技術の確立」を挙げます。その理由は、近年の気候変動による災害リスクの増大への対応、生物多様性の保全や良好な生活環境の形成を、同時に達成することが最も重要であり、グリーンインフラの多面的機能を発揮させるため以下の解決策を提案します。

 1)流域全体を対象としたグリーンインフラの配置計画

 流域の降雨、地形、土地利用、浸水リスク等をGIS等デジタル技術により分析、その対応として調整池、湿地、公園、農地、森林等の貯留・浸透機能を有するインフラをの戦略的な配置を計画します。 河川等はグリーンインフラの組合せを考慮、平常時には生態系保全や景観形成、一方、豪雨時には雨水流出抑制という多面的、多層的効果を発揮する整備を推進します。

 2)地域の自然条件に適合した設計・施工・維持管理

 地域の自然条件、気候、土壌、水文条件、生態系等を詳しく調査します。その上で例えば、植生帯では透水性、保水性、植生の耐乾性・耐湿性、地域固有の在来の植物種、生物、土壌を考慮した設計、施工、維持管理を行います。特に河川や水辺では可能な範囲で、自然及び生物の生息・生育環境に配慮した設計を行います。

 3)DXを活用した順応的管理

 グリ-ンインフラ整備後は、整備目的に対する効果、利用状況等を、定期的モニタリングを継続、IoTセンサー、GIS、ドローン、衛星等DX技術活用によりデータを蓄積し、定量的に評価する管理手法を導入します。期待効果が不足する場合には、植栽変更、土壌改良、排水機能の改善等の順応的管理を予め計画し、PDCAサイクル管理を継続します。

4.将来的な懸念事項と対策

 上記の解決策の遂行では、将来的に以下の懸念事項とそれへの対応策を考慮しておくことが重要です。

 1) 将来的懸念事項

 ① 気候変動による自然条件の変化(想定外豪雨の頻発、自然変化による機能低下等)

② 外来種の侵入や病害虫の発生等による生態系への悪影響

 ③ 維持管理費の増大に対する持続の実現

 2) 対応策

 ① 将来の気候予測の精度向上とリスク評価、施設機能の冗長性と多機能性確保

② 在来種を基本とした植栽計画、定期的な生物モニタリングの継続

③利用可能な公共空間として整備と地域全体の便益享受の仕組み構築 

5.技術者倫理及び社会の持続性の観点からの要件・留意点  

1)技術者倫理  

 グリーンインフラは、自然の変化を踏まえて継続的に評価・改善する「適応型の社会資本」と捉えることが重要です。このため技術者として、科学的根拠に基づく説明責任と透明性を常に意識した倫理行動が求められ、積極的な情報公開により、国民からのコンセンサス獲得に努めることが肝要です。

 2)社会の持続性

 技術者に与えられた使命として自然環境影響を最小化し、将来世代への豊かな自然を引き継ぐことがその重要な役割です。多様な主体との協働によって、人と自然が共生する持続可能な社会の実現に向けた貢献活動の継続が重要であると考えます。 次回は、技術士試験に出題されるようになった「外国人労働者」に関し、私的に解説してみたいと思います。(以上)

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