2026年09月05日 作成 / 執筆:アニ-講師 / 閲覧数: 143

私的解説:「新技術・DXの活用によるインフラの価値向上」
今回は、令和8年度技術士試験建設部門必須Ⅰ-1問題を例として、どのように記述すれば、一定の評価がもらえたのか?あくまで私見ですが解説してみたいと思います。 問題文は以下に要約して記載します。
問題:「新技術・DXの活用によるインフラの価値向上を進めるに当たり,多面的な観点から3つの技術課題を抽出,それぞれの観点を明記,その技術課題の内容を示せ。」
1. 題意の理解
この設問は、「新技術・DXを使って、老朽化、担い手不足、災害激甚化などのインフラ課題を解決し、インフラの価値をどう高めるか」を題意としています。
2. 我が国の施策
我が国はICT技術の社会実装が急進しつつあります。インフラは従来の「施設及び設備」から、データ、ネットワーク、AIを含む国民生活サービスへつながることが求められ、以下の展開施策に関する現状認識が必要です。
・令和8年1月策定、「第6次社会資本整備重点計画」の重点目標
・新技術・DXの活用でインフラの価値(意義・役割)向上、インフラサービスを高度化
・建設分野のDX:i-Construction 2.0、BIM/CIMの原則適用、点検の予防保全へ転換
・担い手不足、老朽化、災害の激甚化に対応、生産性、安全性、持続性を確保
3. インフラ価値向上の技術課題
インフラの価値を向上させる技術課題は多様な側面、切り口が想定されますが、私は以下の3点を技術課題の例として抽出したいと思います。
1)データ連携と標準化(データ管理、活用の観点)
従来からインフラごとの関連データは長年に渡り、膨大量が蓄積されています。しかしながら、データ形式や管理方法がそれぞれ専門施設分野ごとに独立しています。このため相互データのやり取り、横断的連携による共有・活用が容易ではありません。 既存及び収集データの共通データベースの構築等による一元管理、互換性の確保、相互活用の観点から、オープンデータ活用に向けた情報管理の向上が技術課題です。
2)人材・運用体制(人材確保と育成の観点)
技術革新が急進するデジタル技術と、我が国がこれまで重点的に整備してきた既存インフラ関連技術の双方を理解し、自在に活用できる人材が不足しています。特に就労者として以下のデータをその背景事情として示すのは有効と考えます。
・建設業就業者は1997年の685万人から2023年には483万人まで減少
・2024年には55歳以上が36.7%を占めるのに対し、29歳以下は11.7% 特に施工や維持管理では、担い手不足が深刻化、マンパワ-の絶対量不足への対応としてAI・ロボット等による省人化、デジタル人材の育成・確保の観点から、異分野人材との連携、強化による人材・運用、確保が技術課題です。
3)安全性、レジリエンス(多層的安全確保の観点)
ICT技術への依存度が高まる一方で、これに対するサイバー攻撃やシステム障害によるインシデント、近年の自然災害等の多発傾向は、インフラ停止に直結するリスクが高まることが懸念されています。このため「万一、事故が発生した場合でも、機能停止を回避する。」に加え、「障害を受けても迅速に早期復旧を可能とする。」安全な社会システム構築が緊喫な技術課題です。
4. 最も重要な課題と対応策
(1)最も重要な課題と解決視点
上記に対し私は、「デジタル化定着による業務効率化」とそれを実現する「安全・安心社会の両立」を最重要課題として取り挙げ、以下の視点による解決策が重要と考えます。
・生産性と安全性の向上、インフラ機能
・役割(インフラの価値)の最大化
・蓄積デ-タとデジタル技術の活用による質の高いインフラサービスの社会提供
・ICT技術インフラ監視・制御による維持管理コスト低減、事故抑止、サービス向上
・システム依存によるサイバー攻撃、通信障害等、社会影響に対するリスク対策
(2)対応策(案)
1) 維持管理技術の高度化
業務の効率化を推進するためAI、ドローン、ロボット、センシング等を活用したインフラの点検・診断・維持管理データ取得・解析技術の高度化と、AIによる点検・診断の信頼性向上を対策として挙げます。これらは、業務効率化、省人化、安全作業、苦渋作業の解消等の効果を期待できます。
2)防災・減災力の強化
デジタルデータ等を活用した災害予測、監視、早期対応には、多種多様なリアルタイムデータを統合、解析、迅速な意思決定につなげる技術を確立し、防災・減災力を強化することを挙げます。データ-解析の精度向上を図り、判断の迅速化、災害情報の共有化をその効果として示します。
3) 社会・国民サービスの向上
デジタル技術の活用推進はインフラ利用者(国民)へのサービスの高度化、多機能化を推進に繋がります。インフラデータの連携、標準化、利活用促進に向け積極的な財源及び人材投資、セキュリティ強化、個人情報等の保護を前提とした情報管理整備を対応策として提案したいです。
5. 新たに生じるリスクと対応策
リスク対応としてはICTを単に「効率化のツール」とするのではなく、サイバー攻撃や障害が発生しても、柔軟に対応力機能を維持できる従来の安全性に加え、レジリエント性が高いインフラへ転換することが重要です。ここでは、リスクと対応策をあえて箇条書きで整理し、以下のような多面的論述への応答を簡潔にわかり易く表現、それぞれにリンクした記述手法をお勧めします。
1)新たなリスク
①大規模災害やサイバー攻撃によるライフラインインフラ停止等社会影響リスク
②AI、自動化機器の誤作動、過度なデジタル依存による誤判断による事故リスク
③システム障害、通信障害による社会的麻痺に対するセキュリティリスク
2)対策
①監視、予測、判断、伝達技術精度向上、バックアップ体制確立とインシデント訓練の継続
②人間による最終判断と確認、他AIによるダブル検証、フェ-ルセーフ機能装備
③非常用通信、電源等代替設備の確保やオフライン運用への自動切替
5.技術士倫理と社会の持続性の観点からの必要要件・留意点
1)技術士倫理の観点
新技術・DXの導入に当たっては、公衆の安全・利益を最優先とした技術者倫理観が重要です。透明性、信頼性を確保、サイバーセキュリティ等リスクに十分留意し、社会へ貢献する技術者を目指すことを示して下さい。
2)社会の持続性の観点
インフラの価値は安全、安心社会を持続することにあります。環境負荷、地域間格差、ライフサイクルコスト、人材育成・技術継承等を考慮し、将来世代を含めて持続可能な社会に資するため、その質的サービス機能の継続が肝要である思考を示して下さい。
次回は必須Ⅰ-2問題:「グリ-ンインフラの活用社会」について私的解説してみたいと思います。(以上)