「技術士試験に役立つ、読むべき本」

2026年08月01日 作成 / 執筆:アニ-講師 / 閲覧数: 13

「技術士試験に役立つ、読むべき本」

 これまで毎日受験学習に明け暮れた皆さんは、ひょっとしたら試験完了後、時間を持て余している状況かもしれませんね。まずは、試験で記述した答案再現に取り組んで下さい。記憶が新しいうちに再現、口頭試問への重要な準備作業です。とにかく早く完了させておいて下さい。

  今回は、口頭試問のスタ-トのきっかけとなるよう頭を休ませながらも、徐々に始動させるためのウオームアップとして、本を読むことをきっかけとして始めてみませんか。 技術士合格に向け、読むべき本について私見を織り込みながら、いくつかご紹介しますので、この夏休み、是非、手に取ってみて下さい。

 1. 国土の変貌と人々の暮らし(:教材)

 これは、日本の国土が時代とともにどのように変化し、人々の生活や産業にどのような影響を与えてきたかを紹介しています。主に中学生や高校生向けの社会科、地理の学習の教材として利用されています。 この本では、建設部門の必須課題を解説するような「国土が変わることで、人々の仕事や生活がどう変わったのか?」という視点が特徴的です。まさに、建設部門必須問題Ⅰのような、以下のテーマが取り扱われています。

 ・都市化や人口集中による国土の変化

・道路・鉄道・ダムなどの開発と暮らしの変化

・農村や山村、漁村の変化

・自然災害と防災への取り組み

・環境問題や持続可能な国土づくり

2.歴史を紀行する(著:司馬遼太郎氏)

 この本の著者は司馬遼太郎氏であり、歴史紀行・エッセイです。私が学生の頃、当時、地質学教授の授業で、是非、読むべき本の一つとして紹介されました。紹介理由は、以下であったと回想します。

 ・諸君は将来、全国各地の色々な人々と出会い、仲間として仕事を共にすることになる。

・全国各地の人々には、その地域や風土に培われた気質が生きづいている。

 ・これを理解しておくことは仕事や私生活の対人関係において、必ず諸君の役にたつことであろう。

 著者が日本各地を訪ね歩き、その土地の風土・歴史・人物・文化を結びつけながら、日本という国を考察した作品です。この本では、高知、会津若松、佐賀、金沢、京都、鹿児島、岡山、盛岡、三河など12の地域を取り上げています。

 例えば、以下の地域の歴史・風土とそこで培われた人々の気質が描かれています。 

・高知:坂本龍馬と黒潮、自由な気風

・会津:戊辰戦争と会津の人々が受けた影響

・鹿児島:薩摩藩の独立心や外交感覚

・京都:長く都であり続けた歴史と政治との関わり

 この本の大きな特徴は、「歴史は人物だけでなく、その土地の風土によっても形づくられる」という視点です。著者は、山や川、海、気候といった自然環境が、その地域の人々の性格や文化、さらには歴史にも影響を与えていると指摘、その関係性を解説しています。

 私もこれまで仕事上で九州、四国、大阪、盛岡の方と仕事をご一緒させていただきましたが、地域固有の気質の面では、納得したことが多かったと思います。

 3.高熱隧道(著:吉村昭氏)

 この本も前述した教授の紹介の小説です。著者、吉村昭氏による記録文学(実話)です。昭和初期、黒部第三発電所建設のためのトンネル工事が題材です。綿密な取材をもとに、極限状態で危難に立ち向かう人々の姿を描いた代表作です。

  舞台は、富山県の険しい黒部峡谷、発電所を造るためのトンネル(隧道)工事が始まりますが、以下のような想像を絶する過酷な環境であった事実が描かれています。

 ・岩盤の温度は最高約165℃にも達する。

 ・ダイナマイト自体が、高熱により自然発火する危険がある。

 ・工事中に斜面崩落や雪崩、洪水などの自然災害が相次いで発生した。

 想像を絶する現場でありながらも、それでも工事を完成させようとする技術者や作業員の方々の葛藤や使命感、そして人間の力では克服することができない自然の圧倒的な力が克明に描かれています。実際の工事では300人を超える犠牲者が出たとされています。

 この本の魅力は単なる建設工事の物語ではなく、事実に基づいた冷静で迫力ある描写にあると思います。「夢やロマン」だけでは、語ることができない自然に立ち向かう偉大な勇気を痛感する一冊であり、現在も高く評価されている理由は以下と考えます。

・人間の技術と自然の力との対決 

・極限状態における人間の責任感と勇気 

・大規模開発の裏側にあった多大なる犠牲

4.失敗百選(著:中尾政之氏)

 著者は東京大学教授(当時)の中尾政之氏であり、「失敗学」の考え方をわかりやすくまとめた本です。工学書でありながら、技術者だけでなく、企業の管理者や学生、一般の読者にも広く読まれています。 この本の中心となる考え方は、「失敗には共通するパターンがあり、その原因を知れば未来の失敗を防げる。」というものです。

 著者は、さまざまな事故やトラブルを分析し、失敗の原因を41種類に分類しました。 それぞれの原因がどのように重大事故につながるのかを詳しく解説しています。本書では世界的にも有名なタイタニック号の沈没 、コンコルド墜落事故、スペースシャトル・チャレンジャー号爆破事故等、178件もの実例が取り上げられ、失敗の要因について以下に言及しています。

 ・「誰が悪かったか」ではなく、なぜ失敗が起きたのかの考察

・技術に限らず、思い込みやコミュニケーション不足、組織文化などが原因

・過去の失敗から共通点を学び、将来の事故やミスを防ぐ方法

 事例が豊富であり、仕事や組織運営、日常業務にも応用できる内容です。特に総合技術監理部門、リスクマネジメント、技術者倫理の観点では絶好の参考図書と思います。 今回紹介した著書は、技術士二次試験の論述に必要な防災、地域活性化、持続可能性、合意形成などに対し、こうした幅広い知識・教養・歴史観が、記述文の説得力へつながると考えます。 さらには技術士試験で評価される「技術者の人格・使命感」を養う読書という観点で倫理性と人間性の両面を磨く参考書として役立つと思います。技術者視点を広げる意味でも、是非、読んでいただければと思います。

 次回はこれらの著書や資料を読む解く力(:読解力)について、ご紹介したいと思います。(以上)

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