2025年10月25日 作成 / 執筆:アニ-講師 / 閲覧数: 21

「Ⅴ.控室を楽しもう:衛生工学部門」
今回は、私が体験した「衛生工学部門」の口頭試験の準備についてご紹介いたします。私は学生時代に「衛生工学」と言う学科を履修しましたが、水道、下水の水質や処理技術などの分野であり、正直なところあまり関心が深くなく、当時はこの分野は将来、無縁であろうとも考えておりました。しかし、人生とは不思議なものです。まさか、私がこの分野の技術士試験を使命として、受験しなければならないことになったのです。
1. 受験使命
私が所属する部署では廃棄物処理関連業務を担当していました。部員の一人が数年前にこの分野で技術士試験に合格、彼は、技術士取得を契機に独立開業することになりました。会社として衛生工学の部門のコンサルタント登録ができなくなり、当時、私は部門長であり、経営層からその是正を命ぜられました。しかし、そう簡単に人材が存在している訳ではなく、また、人材が短期間で育成できるはずもありません。やむなく自分で、受験を宣言せざるを得ない状況なりました。私はけっして「資格マニア」ではなく、必然として受験が必要であったことを、補足説明させていただきます。
2. 広範知識の必要性
私は退職した彼の技術士添削指導をしてきましたので、この分野の概略的なアウトラインは理解していました。また、立場的にも業務に関与しておりましたし、これまでの経験として汚水処理等業務にも従事してきましたので、比較的なじみ安かったと思います。筆記試験の準備については、これまで私が実践して方法を貫きました。 廃棄物管理での勉強を進めるにつれ、専門分野では浸出水処理、破砕機、焼却炉、汚泥脱水機等設備機器、機械・電気、化学的な要素が濃く、関連する技術知識、設備機器の機能や特徴等について、広範知識の必要性を痛感しました。
3. 再生エネルギ-との関連性
過去問題等を整理準備して行く過程で、衛生工学部門はこの分野として、水質、大気、廃棄物、空気調和、建築環境等があります。私が受験した廃棄物管理は処理・処分に加え、再生エネルギ-への展開性、関連性が強いことがしだいに見えてきました。いわゆる再循環社会システムの構築が切望されていることを、強く認識するに至りました。
4. 控室を楽しもう
記述試験は再生エネルギ-関連の問題が出題され、お蔭様で無事通過することができました。口頭試験はいつも渋谷会場。年齢も56歳になっており、口頭試験5回目にもなると余裕はこそありませんが、初回の時とは心境的にも相当、負担は軽減されていました。 控室はいつもの静寂。「この先、技術士試験を二度と、受験することはないだろう。」と思い、この異様な控室の雰囲気を是非この際、「自分史として、脳裏に刻み、焼き付け、異様なこの空気感を楽しもう。」と勝手に暗示にかけ、受験者個々の「人間ウオッチング」を試みました。控え室内の受験者を見渡すと、やはり、以下のような人ばかりで、余裕のある人は誰一人、発見することができませんでした。
・必死にQ&Aを見返し、記憶する人
・技術士倫理を繰り返し暗唱する人
・白書等をチェックする人
・願書や再現記述をチェックする人
・自作資料を携帯で確認する人
予定の時刻がきて、部屋のドアの前で待機しました。前の受験者が、口頭試験を終了し、退室してきました。なんと額から吹き出るほどの汗。「どんなことを聞かれたのだろう?」「自分も聞かれるのであろうか?」先ほどまでの余裕感はどこへやら、血圧急上昇、不安な気持ちに一転しました。
口頭試問がはじまりました。技術士受験は何回目?、と聞かれたので、事実として、建設(施工計画、建設環境、河川)総監を取得していることを返答しました。私の年齢的な事も起因してか専門技術的なこと、政策的なこと、意地悪な質問は一切なく、無事、終了、合格することができました。
5.想定質問例
衛生工学部門(廃棄物管理分野に特化)の口頭試験で、想定される質問を私なりに以下に整理します。口頭試験受験者の方のQ&A作成のお役に立てば幸いです。
1) 実務経験(経歴票からの深掘り)
・あなたが担当した廃棄物関連の業務で最も課題となった点は?
・廃棄物処理施設の設計/運営で工夫した点の具体的な説明?
・地域住民や行政と調整が必要だった事例は?合意形成の方法は?
・廃棄物の発生抑制や資源循環に関して、あなたが提案・改善した具体例は?
2) 専門知識・技術
・最終処分場の安定型・管理型の違いと、理想とする処分場のイメ-ジは?
・廃棄物処理法に基づくマニフェスト制度の課題は?
・廃棄物の発生抑制(3RのうちReduce)を推進する上での社会的課題は?
・マイクロプラスチック等廃棄物問題に今後、どう対応すべきか?
・廃棄物エネルギー回収(RDF、RPF、バイオガスなど)のメリット・デメリットは?
3) 安全・倫理
・廃棄物処理場内管理上での労働安全上注意すべき点は?
・不適正処理を発見した場合、技術者としてどう行動しますか?
・廃棄物処理のコストと環境保全のバランスをどう考えるか?
・外部とのコミュニュケ-ションの在り方は?
4) 時事・政策
・プラスチック資源循環促進法のポイントは?
・カーボンニュートラル実現に向けた廃棄物管理の役割は?
・循環型社会形成推進基本法の基本原則?
・災害廃棄物に備えた対策とその在り方は?
5)全般
・技術士としてどのように社会貢献していきたいですか?
・あなたが目指す衛生工学分野での将来課題は?
・廃棄物分野における技術士しての役割は?
次回からは口頭試験準備に向け、特に重要な事項と判断される問題解決能力、コミュニケ-ション、リーダ-シップ、リスクマネジメント、自己研鑽、技術士倫理、新技術・技術開発等について、私が考える準備すべきポイントを順を追ってご紹介して行きたいと思います。(以上)