2025年10月18日 作成 / 執筆:アニ-講師
「Ⅳ.河川・砂防 技術提案書の資格要件」
私は転職して、河川構造物分野のセクションに配属になりました。施工会社から、総合コンサルタントの新しい世界へ飛び込むことになりました。未踏分野であった河川分野への新たな挑戦がはじまりました。
1. 受験経緯
私が転職した当時は、建設コンサルタントの世界も新たな時代を迎え、業務発注形態が提案型業務(プロポーザル方式・総合評価方式)への移行時期でありました。業務を受注するには企業及び技術者の同種業務実績、該当分野の技術士資格要件を満足し、事前に提出する「技術提案書」によりで、他社より高い評価点を獲得することが求められるようになりました。さらに、要請分野の技術士資格を取得していなければ、入札参加の選定でふるい分け、制限されることになりました。 このため、好むと好まざるとかかわらず私は、河川・砂防分野の技術士を取得することを迫られました。
2. 求められる専門性
技術士試験はどの分野も共通して専門性が高く、問題解決能力が求められます。合格するためには、実務経験とそれに対応すべく技術研鑽が必要です。河川計画、河川構造物、利水、維持管理、河川情報、地域防災など、新しい専門分野と立ち向うことになりました。
3. 経験論文の構想
経験論文は職場で従事する河川構造物とし、私の自身のキャリアから施工に関連した分野の視点からアプロ-チが良いと考えました。転職後に担当した業務を掘り下げ、課題に対しどのようなプロセスで問題解決へ導いたかを改めて整理して行きました。経験、専門、一般記述もこれまで実践してきた技術士試験に対する準備経験が、後おししてくれ無事、筆記試験を通過することができました。
4. 口頭試験の準備と本番
口頭試験の準備は、これまでに部下や他社の受験者の模擬口頭試験等を行ってきましたので、その方法については従来とほぼ、同様な進め方で行いました。但し、河川・砂防については河川行政、河川法、河川環境、河川情報、住民との協働、防災等、幅広い分野の見識が必要であるため、準備期間がいくらあっても足りないと感じました。
口頭試験はいつも渋谷会場でした。相変わらずの独特の雰囲気の控え室でした。この頃から、口頭試験はその部屋の前で、待機するスタイルであったと思います。私の年齢は50歳になっていたと思います。「鏡の前の一人口頭試験」もある種の定着感も出てきたものの、専門技術者として評価されることについては、口頭試験を数度重ねてもプレッシャ-はあるものです。
口頭試問が始まりました。どうやら試験官はお二人ともに大学の先生の方のように思えました。しかも私の年齢よりも、明らかに若い感じの方々でした。余裕は決してありませんが、年齢が私の方が年上であることに対し若干、アドバンテージを感じることができ、気持ち的に楽になりました。 口頭試問の余裕こそありませんでしたが、年齢、既取得部門があることにより、難解、意地悪、予想外の質問はなく、淡々と終了したように思います。最後の設問では「今更、技術士の義務、責務を聞くまでもないでしょうから、これで終了します。」のしめくくりで、口頭試問が無事終了しました。
5. 河川・砂防分野の口頭試験準備
これから、河川・砂防分野で口頭試験に向け準備される方は、私の経験から以下について整理・準備することをお勧めします。
(1) 専門的知識
・技術的判断
・洪水被害軽減のための河川整備手法
・自然再生や環境に配慮した河川計画を行う際の留意点
・ダム、遊水地、堤防、調節池などの治水施設の特徴とその役割
・近年の気候変動による降雨特性の変化に対する河川計画上の対応と現状
・今後の河川維持管理で特に重要な課題
(2) 社会的要請・制度面
・河川法や水防法に基づく業務上の留意点
・地域住民との合意形成を図るためのあなたが考える施策
・河川整備計画策定における住民参加の意義と地域活動との連携
・SDGsやカーボンニュートラルの観点から河川分野に求められる方向性
(3) 時事・最近の話題
・令和○年○月豪雨の被害事例に基づく、技術的観点からの教訓等
・洪水、地震災害への地域防災力の強化策
・地域におけるリスク評価とその対応
・浸水想定区域やハザードマップの課題と改善点
・ICTやAIを活用した河川管理技術の最新動向
(4)基準超過対応
近年の降雨については従来の実績や経験則を前例基準として適合が困難になってきています。今後、河川・砂防・海洋・海岸分野でどう対応して行くべきかを整理しておくことが必要です。特に全国、地方の直轄河川や中小河川等、山間地、海岸地域において、地球環境、気候変動、安全国土形成の観点から、自分の意見として答えられるよう準備下さい。
次回は、会社の至上命令により受験が必要となった「衛生工学部門」の口頭試験準備についてご紹介します。(以上)